Environment

医療費抑制の潮流

団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、生産年齢人口が60%を割り込み、65歳以上の高齢者は30%を超えると推計され、社会保障費が激増するとされています(内閣府:平成29年版高齢社会白書)。政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で医療費抑制の方針を打ち出しており、今後、病院経営に必要な医業収入の確保はさらに難しくなると考えられます。

消費増税や人件費増で経営環境が厳しさを増す一方で、加速度的に高度化する医療技術に対応し医療の品質と安全を確保するため、病院経営に必要な費用と投資の増加は避けられません。医業収益の減少とコスト増の時代には、経営コストの削減が病院経営を左右する重要課題となっています。

病院経営の現状と共同購入

全国公私病院連盟と日本病院会による「平成29年 病院運営実態分析調査の概要」によると、黒字病院は27%にとどまり、赤字病院の割合は73%と報告されています。この傾向は10年来変わらず、多くの病院で赤字経営が常態化していると言わざるを得ません。

同調査の「100床あたりの年間医業費用」では、人件費が過半を占め、材料費をはじめとした費用が47%を占めます。重要課題である経営コストの削減においては、医療の品質と安全を支える人件費の削減は選択肢になく、その成否は人件費以外の医業費用をどこまで圧縮できるかに懸かっているのではないでしょうか。

既に多くの病院はコスト削減の重要性を認識してさまざまな取り組みを行っているものの、以下のような課題を抱えていると思われます。

  • さまざまな取り組みにより購入価格は一定のレベルまで下がっており、さらなるコスト低減に限界を感じている
  • サプライヤーは直接交渉に応じないため、地元業者との交渉に終始し、十分な価格削減を実現できない。
  • 度重なる診療報酬の改定や競争によりサプライヤーの値引き余力が減少し、通常の交渉では十分な値引きが得られない
  • ベンチマークやコンサルによる交渉で一定の成果を得たが、さらなる購入価格の低減を図りたい
  • 国公立病院は入札制度によらざるを得ず、必ずしも有利な調達になっていない。また事務部門の担当者の定期的な異動は購買活動の障害となっている。

このような状況を打開するには、組織体制とシステムを整え、多くの病院の購買力を結集し幅広い領域で購買活動を展開する共同購入は、極めて有効な手段と考えられます。

病院経営の現状
平成29年6月1カ月分の総損益差額からみた
黒字・赤字病院数の割合(%)年次推移

100床当たりの平均医業費用

平成29年 病院運営実態分析調査の概要
(全国公私病院連盟/日本病院会)

共同購入とは

Group Purchase Organization(GPO)は、多くの病院がグループを形成し購入する資材やサービスのコスト削減を行う組織で、マネジドケアの下でコスト削減が病院経営の課題となった米国で’80~’90年代に大きく成長しました。米国では、医療機関の実に98%がGPOに参加しており、資材やサービスの72%がGPOを介して購買され、社会的な仕組みとして確立されています。

共同購入で重要なのは、病院が当事者であり運営の主体となること。営利を目的とする企業は、共同購入が病院の利益=コスト削減を命題とする以上、利益相反となり直接間接を問わず運営の主体にはなり得ません。病院が自らのために共同購入組織を運営し、病院の購買量を集約して、病院の立場で商品やサービスを選定することが、経済効果の高い共同購入を実現します。