Environment
病院の経営環境
医療費抑制の潮流
日本の総人口が減少する中で、高齢者が増加して高齢化率は上昇を続け、10年後には1/3となると見込まれています。(令和5年版高齢社会白書)。経済成長が伸び悩む一方社会保障費が激増する状況では我国での医療費抑制の取組みは更に強化され、今後、病院経営に必要な医業収入の確保はさらに難しくなると考えられます。
病院の経営環境が厳しさを増す一方で、加速度的に高度化する医療技術への対応と医療の品質と安全を確保には、病院経営の費用と投資の増加は避けられません。医業収益の減少とコスト増の中で、経営コストの削減は病院経営を左右する重要な課題となっています。
病院経営の現状と共同購入
全国公私病院連盟と日本病院会による「令和5年 病院運営実態分析調査の概要」によると、黒字病院は23%にとどまり、赤字病院の割合は77%と報告されています。この傾向は10年来変わらず、多くの病院で赤字経営が常態化していると言わざるを得ません。
同調査の「100床あたりの年間医業費用」では、人件費が過半を占め、材料費をはじめとした費用は48%を占めます。重要課題である経営コストの削減においては、医療の品質と安全を支える人件費の削減は選択肢になく、その成否は人件費以外の医業費用をどこまで圧縮できるかに懸かっているのではないでしょうか。
既に多くの病院はコスト削減の重要性を認識してさまざまな取り組みを行っているものの、以下のような課題を抱えていると思われます。
このような状況を打開するには、組織体制とシステムを整え、多くの病院の購買力を結集し幅広い領域で購買活動を展開する共同購入は、有効な手段となります。
病院経営の現状
令和5年6月1カ月分の総損益差額からみた
黒字・赤字病院数の割合(%)年次推移
100床当たりの平均医業費用
(令和5年6月)
共同購入とは
Group Purchase Organization(GPO)は、多くの病院がグループを形成し購入する資材やサービスのコスト削減を行う組織で、マネジドケアの下でコスト削減が病院経営の課題となった米国で’80~’90年代に大きく成長しました。米国では、医療機関の実に98%がGPOに参加しており、資材やサービスの72%がGPOを介して購買され、社会的な仕組みとして確立されています。
共同購入では、病院が当事者として主体となり「One for All, All for One」の精神で取組むことが必要です。営利企業による共同購入は、共同購入が病院の利益=コスト削減を命題とする以上、利益相反となり運営が難しくなります。病院が自らのために共同購入組織を運営し、病院の購買量を集約して、病院の立場で商品やサービスを選定することで、経済効果の高い共同購入が可能となります。
共同事業とは
コスト削減と共に、加盟病院が協力して知見や情報を共有し、病院の経営や運営の改善を資する活動を行っています。加盟病院が相互に協力することで、自院の立ち位置を確認し、母体や地域が異なる様々な医療機関と情報や知見を交換・共有することで、経営改善のヒントが得られます。